日本インターンシップ学会

 

会長挨拶

インターンシップの持続的発展に向けて

亀野 淳

北海道大学 教授

日本インターンシップ学会は、1999年の創設以来、四半世紀の歩みを重ね、わが国のインターンシップの普及と発展に寄与してまいりました。この営みは、歴代の会長や役員、そして実務と研究の双方から情熱を注いでこられた多くの先達のご尽力の積み重ねによるものです。私はそのご功績に深く敬意を表するとともに、新たな節目を迎える本学会の舵取りを担う責任の重さをあらためて感じております。

今日、私たちを取り巻く社会は、これまで経験したことのない速度と規模で変化しています。少子高齢化に伴う人口減少、グローバル化と多文化共生、技術革新とDXの加速、環境・エネルギーをはじめとする地球規模の課題、そしてキャリアの不確実性の増大など、社会構造そのものが大きく変化しています。地域や産業の姿も再定義を迫られ、働く個人に求められる能力なども日々変化しています。

こうした時代において、若者のキャリア観にも顕著な変化が見られます。自らの生き方や価値を丁寧に見つめながら、多様な選択肢の中で試行錯誤し、自らの可能性を検証しようとする姿が広がっています。大学教育にも、学習者の主体性を支え、実社会との接続を強化し、経験を意味化できる学びの設計が求められています。

このような社会変動のただ中で、インターンシップはかつてよりも重い意義を帯びています。それは単に「職業体験」や「就業機会の提供」にとどまるものではありません。インターンシップは、多様な主体が協働し、未来を担う人材が経験を通じて自己を探究し、社会との関係性を結び直していくための公共的な装置であると、私は考えています。

同時に、インターンシップは目的そのものではなく、教育的・社会的な目的を実現するための手段です。だからこそ、その質を問い続け、エビデンスに基づき、理念を実装し、成果を共有し続けることが求められます。制度や名称の議論に終始するのではなく、「どのような経験が、どのような学びや成長、そして社会的価値を生むのか」という本質的問いを、私たちは社会とともに深めていく必要があります。

私は本学会の運営において、インターンシップの「持続的発展」という理念を掲げます。持続的発展とは、単なる拡大や延命ではなく、時代の変化に学びながら、本質を深化させ、価値を更新し続けることです。そこには、多様な主体の対話と連携、実践と研究の協働、地域や国境を越えた視点、そして未来世代への責任が組み込まれなければなりません。

インターンシップは、社会をより良くする力を持っています。未来の社会は、誰かがつくるものではなく、私たち一人ひとりがつくり上げていくものです。本学会は、多様な立場の方々とともに、インターンシップを通じて希望を育み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

皆様の温かいご支援とご理解を賜りますようお願い申し上げます。

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