日本インターンシップ学会

 

第30回研究会

テーマ英国における移行・学び直しとインターンシップの往還
日時2023年8月6日(日) 9:30~11:00
形式オンライン(Zoom)
企画趣旨英国は、日本のメンバーシップ型労働市場とは異なるものの、高等教育と職業とのリンクが弱いという共通の課題を持ち、しかし社会は積極的に学び直しを受け入れています。本研究会では英国の事例をもとに、日本の大企業への人的資源情報の開示義務やひろくリスキリングへの政策的推奨のもとで、インターンシップや職場を基盤とする学修(work based learning)による学びと職業との往還のこれからの可能性を探ります。英国では、若年者は限られた社会的経験のもとで短期・早期に大学を修了します。インターンシップはどのように活用され職業への移行を果たしているのか。幹部候補の研修も知られていますが、大多数の職業専門的な知識・技能を持たない学生を社会はどう受け入れるのか。この課題については吉本圭一会員が日欧比較研究データをもとに報告します。また、英国では、企業経験を通して専門的技能を蓄積しキャリアを形成していく途上で、どのようにリカレントな学び、リスキリングが試みられているのか。インターンシップや職場での学修がどう活用されているのか。英国大学院に留学中の眞鍋和博会員からは現場での参与観察アプローチを通してこの課題に迫ります。2つの発表を踏まえ、参加者の皆様とともに、英国における学びと職業との往還の理解を深めるとともに、日本におけるリスキリングの課題とインターンシップのあり方について総合的な議論ができれば幸いです。
プログラム〈司会・進行〉 平尾 元彦 会員(山口大学 教授)
〈開会挨拶・趣旨説明〉 江藤 智佐子 会員(久留米大学 教授)
〈発表1〉 「英国における学びと職業との往還-日欧の大学教育と職業への移行の比較研究から」
    吉本 圭一 会員(滋慶医療科学大学 教授)
〈発表2〉 「英国大学院における学び直し(リスキリング)とインターンシップ」
    眞鍋 和博 会員(北九州市立大学 教授)
〈総括〉

支部総会に続き、2023年8月6日(日)にオンライン(Zoom)形式で第30回研究会を開催しました。『英国における移行・学び直しとインターンシップの往還』と題し、日本のメンバーシップ型労働市場とは異なるものの、高等教育と職業とのリンクが弱いという共通の課題を持つ英国に焦点をあて、学びと職業の往還の実態を探り、教育と職業とのミッシングリンクをつなぐインターンシップ、職業統合的学習(WIL)の活用について、二人の登壇者から国際的な共同研究データや現場での参与観察をもとに発表いただきました。

平尾元彦会員(山口大学・教授)の司会・進行により、副支部長の江藤智佐子会員(久留米大学教授)からまず研究会の趣旨説明がなされました。

そして1番目の発表として、吉本圭一会員(滋慶医療科学大学教授)から「英国における学びと職業との往還-日欧の大学教育と職業への移行の比較研究をもとに-」と題し、日欧大卒調査(CHEERS:12か国10万人の大学卒業生調査)の分析結果をもとに、日英の高等教育と職業への移行課題、英国と日本の「エンプロヤビリティ」とインターンシップの政策的アプローチについての課題が提示されました。日英の新卒者の採用と初期キャリアの特徴や英国の「学卒プログラムgraduate scheme」など採用要件として大学の専門分野や学業成績がどのような活用がなされているのか、また職業への移行と大学等へのかかわり方、専門分野を通した職業とのレリバンスに向けた教育のあり方へのインプリケーションが提示されました。

これらの課題を受け、2番目の発表として、英国留学中の眞鍋和博会員(北九州市立大学教授)から「英国大学院における学び直し(リスキリング)とインターンシップ」と題し、リスキリング、リカレント、学び直し等の用語の整理の概念化、自身の大学院留学という学び直し経験からの知見、英国での移行やインターンシップの実情についての報告がなされました。

総括討論では、参加者からの活発な質疑応答がなされ、「人生の時刻表」の問い直しなど発表者から得られた示唆をもとに多様な意見が交わされました。

参加者数は18名(うち非会員2名)の一画面に収まる研究会でしたが、日本モデルを再考する有意義な研究会となりました。

(九州支部副支部長 江藤智佐子・久留米大学)

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