日本インターンシップ学会

 

第14回研究会

日時平成27年3月27日
場所福岡商工会議所ビル
テーマ「効果的なインターンシップを追求する」
プログラム1.開会のあいさつと問題提起 吉本 圭一(日本インターンシップ学会会長・九州支部長)
2.基調講演「インターンシップ終了後も続く関係作り-小さな会社の社会貢献と人材育成-」
     高橋 康徳氏(株式会社カウテレビジョン代表取締役社長)
3.事例発表①福岡女子大学
 「学びを生み出し、深める『ふりかえり』:国内外体験学習の実践から」
     和栗 百恵氏(福岡女子大学国際文理学部准教授)
4.事例発表②福岡工業大学
 「中長期実践型インターンシップの取り組み」
     宮本 知加子氏(福岡工業大学FD推進機構特任教員)
5.事例発表③北九州市立大学
 「海外インターンシップの展開事例と効果」
     永田 公彦氏(北九州市立大学グローバル人材育成推進室特任教授)
6.総括討論とまとめ
     司会進行 眞鍋 和博(日本インターンシップ学会九州支部副支部長)

第14回九州支部研究会を開催しました。今回の研究会では、年度末にもかかわらず、会員を始め、大学や企業のインターンシップ関係者ら55名の参加がありました。

はじめに、支部長の吉本圭一会員から本研究会の問題提起がなされ、高橋康徳氏(株式会社カウテレビジョン・代表取締役社長)から企業サイドの事例として、「インターンシップ終了後も続く関係作り-小さな会社の社会貢献と人材育成-」と題した基調講演がなされました。社長自らがインターンシップを社会貢献の一つとしてとらえ、本気で取り組むことで、社員の人材育成に大きな影響を与えている事例が報告されました。企業が本気で取り組んだ成果として、2011年度夏期インターンシップを経験し、その後社員として現在勤務する川上氏からも、インターンシップで多様な人材との交流で刺激を受け、気づきを得たことで、その後の就業行動に大きな影響を与えたことが報告されました。高橋氏からはインターンシップを実施する上での企業のスタンスについて、「インターンの定義が重要」、「大人として接する」、「目先の利益にとらわれない」という3つのポイントが提言されました。

次に、大学サイドから事例発表①としては、和栗百恵氏(福岡女子大学)から「学びを生み出し、深める『ふりかえり』:国内外体験学習の実践から」というテーマで、「クリティカル・リフレクション(深いふりかえり)」は、学びを生み出し、深め、学生が自らクリティカル・リフレクションできるようになるためには、教員がクリティカル・リフレクションを支援することが大切」という話題提供がなされました。クリティカル・リフレクションという学習手法をインターンシップの中でどのように位置づけ活用しているのか、福岡女子大学での取組事例を示しながら、授業デザインや学習目的・目標の設定などが具体的に示されました。

事例発表②としては、宮本知加子氏(福岡工業大学)から「中長期実践型インターンシップの取り組み」というテーマで、志向力、共働力、解決力、実践力の「4つの力」育成によるキャリア形成支援について、就業力育成プログラムの事例を中心に報告が行われました。参加者が大幅に増加した背景には、1年次の必修科目として「キャリア形成」を配置しただけでなく、インターンシップを軸とした組織体制、カリキュラムを体系的に整備したことなどが、プロセスを示しながら報告されました。実践型インターンシップについては、「企業が実際に抱える課題に取り組み成果を出す」「6週間のインターンシップに取り組む」「大学混成チームで活動する」という3つの特徴が提示され、学生の評価方法にルーブリック評価を取り入れ、企業担当者と面談しながら評価するという手法が紹介されました。

事例発表③としては、永田公彦氏(北九州市立大学)から「海外インターンシップの展開事例と効果」について、2年間の取り組み事例についての報告がなされました。「異文化の中で働く体験を通して職業観を養い、グローバルに活躍する人材を育てることを目的に、初年度は手探り状態で取り組みが始まりましたが、2年目には51名の参加者(初年度は17名)が得られ、1~4週間、旅行会社や通信販売系会社など海外の日系企業の現地法人などで、13か国34社の企業・団体等でインターンシップを体験した事例を中心に報告がなされました。海外インターンシップの効果として、「グローバル人材としてのマインドセット・基礎力・教養の獲得」を学生が身に付けている点が報告されました。

最後に吉本会員からまとめとして、ドイツのデュアル大学の事例をもとに、密度の濃い職場体験をさせるためには、日本的文脈の考慮しながら海外インターンシップを実施することへの課題や大学でのグッドプラクティスをさらに研究会で充実して欲しいことが示されました。

約半数の参加者が企業関係者ということもあり、企業と大学の双方が人材育成に寄与する効果的なインターンシップを構築するためには、担当者と学生がどのように関わり、どのような能力を育成していくのか、様々な取り組みを整理しながら、報告者とフロアとの間で熱心に議論が展開され、盛会のうちに研究会を終えることができました。最後になりましたが、研究会の運営に際しては、九州インターンシップ推進協議会の皆様に多大なご協力をいただきました。

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