日本インターンシップ学会

 

第15回研究会

日時平成27年12月4日(金)
場所福岡工業大学 FITホール
プログラム報告1:「地域活性化につながる戦略的インターンシップ」
   古賀正博会員(九州インターンシップ推進協議会・事務局長)
報告2:「震災復興の現場で社会的課題に取り組む長期インターンシップ【東北】」
   眞鍋和博会員(北九州市立大学・教授)
進行:吉本圭一会員(日本インターンシップ学会・会長/九州大学・教授)

日本インターンシップ学会九州支部は15回目となる研究会は、「九州インターンシップ推進協議会設立15周年記念事業」の一つの分科会として「地域活性」をテーマに、同事業と共催させていただきました。大学、企業などインターンシップに興味を持つ関係者の皆様による53名の参加者がありました。

最初に古賀会員より「地域活性化につながる戦略的インターンシップ」について、経済団体の立場からの取組みについて報告がされました。古賀氏は、九州インターンシップ推進協議会の事務局長を担当されていますが、福岡中小企業経営者協会の理事としても多様なネットワークを駆使し、インターンシップを推進する活動をされています。一つ目の取組みとして、地場企業と学生をつなぐPBLとして「キャリアスクーププロジェクト」の事例が紹介されました。このプロジェクトは若い人材が不足している中小企業の悩みから生まれたものであり、地域企業の若手社会人が学生のメンターとなり、地場中小企業にインタビュー(取材)を行い、記事作成をインターンシップ形式で行う活動です。この取り組みの特徴は、学生間はヨコのつながりを、事務局は上司役を担い厳しいビジネスルールを教えるタテのつながりを、中小企業の若手がメンターとしてナナメの役割を担い、タテ、ヨコ、ナナメのコミュニティを作り、学生が切磋琢磨しながら人材育成されていくものです。

二つ目の取組み事例は、関東関西から福岡へUIJターンのインターンシップである「福岡魅力発見インターン」です。他県からの学生を福岡の若手経営者の企業で受け入れるインターンシップですが、地域の魅力を他地域の若者が見出し、発信するだけでなく、社長宅に宿泊して将来のことなどを語り合ったりするなど、密度の濃い10日間を体験するインターンシップです。

この2つのプロジェクトの共通点は、受け入れ側が本気で何かを能動的に実施することで、学生たちが大きな化学反応を起こす成果につながるということです。

次に、眞鍋会員から「震災復興の現場で社会的課題に取り組む長期インターンシップ【東北】~北九州市立大学地域創生学群「チャレンジプログラム」~」についての報告がなされました。地域創生学群では、約50プロジェクト、1000名の学生が北九州においてPBLやサービスラーニング行っています。そのプロジェクトの一つとして、「東日本大震災関連」にも取り組んでいます。今回の報告は、3年次生がプロジェクトを外れて自らの興味関心に沿って実践できる「チャレンジプログラム」として長期のインターンシップを行っている学生についての報告が中心でした。多くのプロジェクトを同時並行的に、ルーティン的なものとプロジェクトを一緒に活動させることで、教育効果につながっていきます。

学生がプロジェクトに費やす時間は1週間あたり平均約30時間もあり、当事者意識が強くなることで、必修科目でありながらもやらされた感はなく、自ら主体的に取組みのめり込んでいくというスキーム作りが学群全体で上手く機能していること、地域課題解決の枠組み自体を新たに創出できる人材育成につながっていること、地域社会の要請を受けることでインキュベーターの育成につながっていることなどの成果が紹介され、実習・演習の地方創世人材育成のカギとなっていることが報告されました。長期インターンシップを行う前に、1~2年次の地域と関わるプロジェクトを実践することで、基本的な社会人としての振る舞いなどの下地ができているため、スムーズに長期インターンシップに参加することが可能となっているようです。

最後に、吉本会員から総括として、古賀報告は地域が担っていたタテ、ヨコ、ナナメの機能をインターンシップで復活させようとする取組みであったこと、眞鍋報告は、日本版デュアルシステムと呼べるようなチャレンジグな取組みを学部全体で実施していることが述べられ、チャレンジングなタスクに地域や大学が取り組むインターンシップであるというまとめがなされました。

報告者の実施内容から本気が伝わる熱い報告であったため、フロアからも活発な質問が多く寄せられ、盛会のうちに研究会を終えることができました。この研究会だけでなく、「九州インターンシップ推進協議会設立15周年記念事業」には200名を超える参加者があり、会場のあちこちで学校、企業、自治体がインターンシップを通してどのような人材を育成したらよいか、同じテーマを共有する交流の場にもなりました。年間300社もの企業とのインターンシップを仲介する九州インターンシップ推進協議会の多大なご協力をいただきましたことに御礼申し上げます。

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