日本インターンシップ学会会長
吉本圭一
日本インターンシップ学会は、1999年創設され、2024年に25周年を迎えました。
学会創設以前は、教育から職業への移行の構造変動・制度改革の始まりの時期でした。新規学卒定期一括採用のもと、訓練可能性による採用が拡がり、銘柄大学卒業者確保のための青田買い早期化と、就職協定の見直しとがくり返されていた時代です。1990年代に入りバブル崩壊と学卒無業問題、日経連の雇用多様化提言、就職協定廃止とともに、1997年に当時の文部省・労働省・通産省の三省合意によるインターンシップ推進が始まりました。中学・高校等でも、脱偏差値とゆとり教育が議論され、阪神淡路大震災後の1998年兵庫県の学外体験活動「トライやる・ウィーク」は全国各地に拡がり、特別活動、総合的な学習の時間、課題研究等によるインターンシップが教育政策の目玉の一つとして取りいれられました。
日本インターンシップ学会は、教育と職業との関わりの暗中模索のなか、高良和武初代会長(東京大学名誉教授)はじめとする有志によって創設されました。設立当初から現在も引き継がれている会則第1条には、「学生等が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」、「学校と企業等との連携により行われる形態を基本とする」という明確な定義あり、これら広範囲の研究課題が集約されています。
教育改善・制度改革への熱意集まる学会活動を経て、2011年には田中宣秀10周年記念事業ワーキンググループ委員長のもと「日本インターンシップ学会〜10年の記録〜」が刊行されました。その巻頭言で、私は「学の確立」を課題としつつ、学術と実践との往還という学会員の視界を豊かにしていく課題を提示しました。
その後「インターンシップ」という用語は、さまざまの界で多様な「共通感覚」はありながらも一定の市民権を 得て、学会規模も拡大しました。他方で文教・労働政策的な見直しも提起され、新たな研究課題も発生しています。創設25周年を迎え、あらたに2008〜2022年度までの期間に焦点をあてた記録編纂を課題とし、2022年8月に江藤智佐子委員長、山口圭介委員、和田佳子委員による25周年記念誌刊行WGを組織し、このたび本誌刊行となりました。また、並行して学会員動向と学会活動への意見を把握するため、亀野淳委員長、橋秀幸委員、中島美佐穂委員による会員動向調査WGを立ち上げ、こちらは2023年度から企画研究委員会のもとで調査結果をとりまとめ、別途刊行の予定です。
本誌からWGのみなさんの精力的な資料吟味の跡がうかがわれます。史実から組織として、過去に学び、自らを知り、未来につなぐことの大切さを多く知ることができます。あらためて関係各位のご尽力に感謝したいと存じます。本学会は、インターンシップと職業統合的学習のこれからの課題と方向の更なる解明を目指します。どうぞよろしくお願いいたします。
日本インターンシップ学会 創設25周年記念誌 「巻頭言」より
日本インターンシップ学会 創設25周年記念誌(PDF版)