吉本 圭一
(滋慶医療科学大学、九州大学名誉教授)
第一には、繰り返しますが、インターンシップを広い視野から理解することです。これこれの活動や経験は「インターンシップ」と呼ぶべきでないなどといったメッセージが、いろいろな政策議論で出されたりします。しかし、そうした活動に関わる当事者にあっては、それもまた「インターンシップ」です。インターンシップと呼ばれていない活動も、インターンシップと同等以上の機能を果たすことがあります。研究年報第24号の特集 「職業統合的学習 (Work Integrated Learning : WIL)」も、そうした多様性を包容する思想に基づいています。資格取得のための実習も、それぞれの専門領域で固有の展開をしていますが、そこに通底する機能的な価値は、インターンシップにも当てはまると考えられます。実習の段階性や指導者の関与など、資格取得の実習から多くを学ぶことができます。他方で、ボランタリーに参加する学習者の視点などは、本学会で多く扱われる資格要件以外のインターンシップ等の研究から、資格実習等の研究に示唆を与えることができると考えます。広い視野から学ぶ、視座の交換ということを課題の第一としていきたいと思います。
第二には、それと関連した、インターンシップを担う人材の専門性の理解と能力開発へのアプローチです。広い視野から学ぶことは、学術の界としての学校と職業現場である生活の世界とを学習者が往還するインターンシップ・WILにも通じます。その活動に関与する関係者にもまた、広い視野でみる力が求められます。インターンシップの現場を担う関係者はどのような人か、どこから来て、どのような力を発揮し学習者の成長を促していくのか。これらの問いが今後のインターンシップ・WILの充実にむけた重要な研究領域となります。
この研究領域は、本学会においては「汝自らを知れ」というギリシアの格言につながります。会員が自らを理解し、また相互にその理解を深めていくことが第三の課題です。本学会では、学術と職業の往還という研究対象をめぐって、その往還の現場で仕事をしたり、また学術サイドからそれを観察したり、職業や社会の現場から学習者を受け入れたり、様々な会員がいます。往還の現場にいるというだけで自ら往還ができるとは限りません。それぞれが、どのような知識と経験を踏まえてどこに「往還」をするのか、またさらなる専門性の向上のための方途は何か、会員が相互に自らの経験を、学会という対話の場(アゴラ)に持ち込み、その問いを深めていくことが大切だと思います。