わが国の経済・社会を取り巻く環境は、グローバル化、高度情報化、経済の成熟化など、かって経験したことのない歴史的転換期にあり、今後幾多の改革を進めていくうえで次代を担う人材の育成は喫緊の課題であります。こうした状況下のもと、学生に勤労観・職業観を醸成する教育のあり方がいま問い直されようとしており、産学連携によるインターンシップに対する期待が急速に高まってきております。
一昨年、文部省・通産省・労働省の三省によって発表されました「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」によりますと、インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と幅広くとらえ、産学の連携によって行われる人材育成の一つの形態として位置付けられております。またその意義として、教育研究と社会での実地の経験を結び付けることによって、学校教育における教育内容・方法の改善、充実が図られ、高い職業意識と独創力のある人材の育成に繋げていくことが謳われております。
また、国の施策として教育改革のなかにインターンシップの推進が盛り込まれたことを契機にして、全国各地で産学連携によるインターンシップが広がりを見せております。このことは極めて意義深いことと考えておりますが、一方で、インターンシップの名を借り、商業主義に走った就業体験も散見されております。
これまで、インターンシップの実践などを通じて種々の研究をしてまいりました私達は、インターンシップはあくまでも学校教育の一環として捉え、産学関係者の高い倫理と道義のもとにインターンシップが健全に発展、普及していくことを願い、今般学会を設立して一層の研究を続けて行こうとしております。
インターンシップの研究に当たりましては、学生がインターンシップを通じて身につけました勤労観・職業観が社会に出てからどのような効果があるのか、学校と企業などの連携による教育や研究の波及的な成果、学校と企業などの教育現場におけるコストと効率の問題、インターンシップのカリキュラム上の位置づけ、学生の職業選択・進路指導と学校の職業教育のあり方など様々な視点からのアプローチが必要と考えております。また、単なる職業教育や技術教育の域を出て、教育学、経済学、労働法、社会学、心理学、科学技術などの幅広い観点からインターンシップを捉えることも必要でありましょうし、学生の就業体験がその後の学問や真理の探求に寄与できるかという研究も求められましょう。学問としてのインターンシップの研究の意義はここにあると考えております。
欧米では100年近くの歴史があるインターンシップもわが国では、いま、新しい見地から始まったばかりですが、隣接科学の関連分野と広く連携を保ち、グローバルな視点で内外の学会との連絡を図りつつ、自由な研究を行う場を作ることが重要であるとの認識に立ち、この度、インターンシップ学会を設立するものであります。積極的なご賛同とご協力を頂きますよう、幅広い分野の皆様の参加をお願い申し上げます。
平成11(1999)年 3月 20日
日本インターンシップ学会役員一同